60%の下落を取り戻すために必要なリターンは?

S&P500やオールカントリーには、どれだけのリスクがあるかご存じでしょうか? 例えば、2008年にリーマンショックという金融危機がありました。 100年に一度の金融危機と呼ばれるほど大きな危機でした。 その当時、リーマンショックで、S&P500とオールカントリーがどれだけ下落したかというと……なんと約60%も下落してしまったのです。

仮に、S&P500に1000万円投資していたとしたら、60%も価格が下落してしまったので損失は600万円です。つまり、あなたの資産は400万円に減ってしまうということです。 ではこの60%の損失を取り戻すには、どれくらいのリターンが必要だと思いますか? 「60%の損失を取り戻すんだから、60%のリターンが必要なんじゃないの?」 このように思ったかもしれません。でも、それは大間違いです。

実は、60%の下落を取り戻すには、60%のリターンでは足りません。 最初に1000万円だったものが60%下落して400万円になってしまったわけですから、400万円に対して60%のリターンがあったとしても、利益は240万円にしかなりません。 400万円に240万円の利益を足しても640万円にしかなりませんよね。全然、元の1000万円には届きません。100%のリターンがあっても400万円と利益の400万円を合わせて800万円ですから、まだ足りません。

では、400万円を1000万円に戻すために必要なリターンは何%なのか? それは、なんと150%ものリターンが必要になります。 150%で600万円の利益ですから、400万円と600万円を合わせて1000万円です。これで、ようやく元に戻ります。 つまり、60%の価格の下落を元に戻すには、150%のリターン、言い換えると2・5倍に増やさないといけないということです。

これが理解できると、リーマンショックの60%の下落というのが、いかに大きなリスクだったのかということがお分かりになると思います。 S&P500やオールカントリーのような商品には、こうした大きなリスクが潜んでいるのです。

年平均「11% 」の真相とは?

年平均11%というリターンは、「毎年必ず11%増え続ける」という意味ではありません。その途中経過では、こういったリーマンショックのような大暴落もあったわけです。そして、良いときと悪いときを繰り返して、30年間という長い目で見たら平均11%のリターンだったということなのです。 「資産が年11%ずつ増えた」という意味ではないことに注意してください。

というわけで、投資には、どうしてもリーマンショックのような大暴落に遭遇する リスクが存在しています。いったん遭遇したら、その損失を取り戻すのに長い年月が かかることになります。

例えば、1950年から2017年のS&P500のデータを見ると、10年間保有していても元本割れしているケースもありました。このような背景があって「50代以上の人が投資をするのは危険。節約して質素に暮らすほうがいい」というのがユーチューバーやインフルエンサーたちの発言の真意なのです。

●第2回は【「オルカン」「S&P500」は分散投資じゃない? 50歳からは知っておきたい人気金融商品の弱点】で、投資信託のリスクを詳しく解説します。(6月20日公開予定です)。

50歳ですが、いまさらNISA始めてもいいですか? 

 

鬼塚 祐一 著

出版社 フォレスト出版

定価 1,870円(税込)