適正な資産規模を保つことの重要性
以上の通り、投資信託の資産規模=残高には適正な水準があり、必ずしも「大きければ大きいほど良い」というわけではない。
そもそも投資信託には、信託金限度額という上限額が銘柄ごとに約款で定められている。信託金限度額は投資対象や運用手法によって異なり、大きいもので数兆円単位、小さいものだと百億円程度に設定されており、ファンド間で開きがある。運用会社はファンドの純資産残高が信託金限度額に近づくと、販売を一時的に停止したり、限度額を引き上げたりという措置を取る。限度額を大きくしても運用に支障がないと運用会社が判断した場合は、アクティブファンドでも数兆円単位まで引き上げることもある。
例えば、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」シリーズを運用するアライアンス・バーンスタインは、2020年以降、複数回にわたり同シリーズの信託金限度額の引き上げを行ってきた。人気のDコース(毎月決算型、為替ヘッジなし)の信託金限度額は2024年4月現在、2兆5000億円である。
積立投資している投資信託が「売り切れ」になったら?
では、自分が保有する投資信託の人気が出て「売り切れ」状態となった場合、どうしたらよいのか。
先述した、適正な運用資産規模を維持するための販売停止であれば、大きな心配は必要ない。というのも、販売停止措置が取られても、換金(解約)は通常通りに行えることが多いためだ。解約は自由にできるため、自身の投じた資金が「凍結」されるようなことは基本的にないと考えてよい。
ただし、「投資対象地域で非常事態が発生した場合」においてはこの限りではない。例えば、ウクライナ侵攻をめぐって世界各国から経済制裁を受けたロシアは、株式市場の機能が事実上停止し、日本で展開されているロシア関連の投資信託にも影響が及んだ。この場合、そもそも市場が正常に機能しておらず、基準価額すら算出できないため、投資信託の解約も制限され、資金が事実上「凍結」された状態となる。こうした、流動性の極端な低下に伴う販売停止は、人気が出て「売り切れ」の状態になるのとは根本的に性質が異なるため注意が必要だ。
なお、積立の取り扱いについては、個々のファンドや運用会社によって対応が分かれる。先述の「日本好配当リバランスオープン」をはじめ、既に設定している積立についてはそのまま継続できることが多いが、ファンドによっては、積立による購入も制限されることがある。
繰り返しになるが、短期間のうちにファンドの人気が出て「売り切れ」の状態になったとしても過度に心配することはない。ただし、まれに積立も停止されることがあるため、販売会社経由でお知らせ(レター)が公表されたときは、その内容を必ず確認するようにしてほしい。