取引所5つの収益源 リスクは増加傾向の費用
最後に日本取引所グループの事業内容を確認しておきましょう。同社には5つの事業があり、金融商品の売買に依存しない収益源もあります。
【セグメント売上高(2023年3月期)】
・取引関連:531億円
・清算関連:280億円
・上場関連:137億円
・情報関連:276億円
・その他:116億円
出所:日本取引所グループ 決算短信(外部リンク)
日本取引所グループの最大の収益源が取引関連収益です。取引関連収益は、金融商品の売買にかかる手数料です。主に証券会社といった取引参加者から徴収しています。基本の手数料のほか取引高や注文件数に応じた手数料があり、取引が増えると収入も増加する傾向にあります。
日本銀行が2013年に導入した異次元の金融緩和以降、国内の株式はおおむね右肩上がりに上昇してきました。売買代金も増加しており、日本取引所グループの業績にも貢献していると考えられます。
清算関連収益は清算業務に関する手数料から成り立ちます。清算業務とは買い手と売り手の間に立ち、商品と代金の受け渡しを代行する業務です。日本取引所グループが代金の未払いといったリスクを引き受けることで、投資家は顔が見えない相手とも安心して取引することができます。清算業務は、私設取引所(PTS)や店頭取引など、日本取引所グループの取引所を介さない取引もカバーしています。
情報関連収益は、相場や株価指数といった情報の利用料です。相場情報を配信する情報ベンダーなどから徴収しています。また指数算出会社として東証株価指数(TOPIX)やJPXプライム150指数といった指数を開発しており、その利用料も収益源となっています。
上場関連収益は、上場会社から徴収する手数料です。新規上場にかかる審査料や新規上場料のほか、上場を維持するための年間上場料、また新株を発行する際の料金などから構成されています。
その他の営業収益は、主にアローネットとコロケーションの利用料で構成されています。アローネットは災害時に取引所への接続を維持できるネットワークサービスで、コロケーションは機器を取引所内に設置できるサービスです。証券会社や高速取引業者(HFT)といった取引参加者のほか、情報ベンダーなどが利用しています。
これら5つの収益に対し、営業費用は主に人件費とシステム関連の費用、減価償却費から構成されています。減価償却費は、主にソフトウェアやリース使用権、システム設備といった資産から発生しています。
取引の高度化や高速化に伴い、日本取引所グループはIT投資を積極化させています。このため営業費用は増加傾向にあり、利益を圧迫する要因となっています。
競合の少ない日本取引所グループは、収益面は盤石といえるでしょう。しかし増加傾向にある費用は懸念材料です。直近5期(2018年3月期~2023年3月期)で営業費用は33%増加した一方、増収率は11%にとどまります。投資の際は注意したいところです。