新たなデータも注目され 財務諸表との連携も

――口コミデータは、ほかにどんな切り口から運用戦略に使うことができますか。あるいは、口コミ以外に注目しているオルタナティブデータはありますか。

神田 口コミデータは、ESGの観点から女性の働きやすさを評価することなどにも活用できます。働きやすい環境の整備は人材の定着につながりますし、人的資本が蓄積されることは業績にもポジティブであると考えられます。実際、この仮説を検証したところ、株価に対して有意に働くとの結果が出ました。

口コミ以外で注目しているデータとしては、企業の二酸化炭素排出量と人流データが挙げられます。前者はESG投資の世界的な広がりもあって頻繁に取り上げられるテーマになりましたが、今のところリターンとの関係については見解が分かれています。

そもそも二酸化炭素排出量に関するデータはベンダーによっても内容や質が異なっていますが、このテーマは今後も運用業界のメインストリームであり続けるでしょうから、データの精度向上や運用戦略への展開が期待されます。

人流データに関しては、スマートフォンのGPSなどから得られる位置情報が該当します。これを基にしてオフィスやホテル、商業施設の稼働率や業績予想に応用できるという点で、特にJ-REIT投資において有効だと考えています。

あるいは、オルタナティブデータと従来の財務諸表を組み合わせた新たな指標も誕生しており、例えば、企業の売上高あたりの二酸化炭素排出量で求められる「炭素強度」がそれに当たります。こうした指標はオルタナティブデータであると同時に、一般的な財務データとも密接に関連していますから、2つのデータの境界はなくなりつつあると言えるのではないでしょうか。