<前編のあらすじ>
広田歩(40歳)は大学時代の友人・笹原と一緒に起業して成功を収めた。港区の一等地のデザイナーズ・マンションに妻の玲子(37歳)と幼稚園へ通う息子と3人で何不自由ない幸せな生活を送っていたが、笹原の彼女が25歳の美女であると知ってしまったことや、仕事が成功し華やかな場所で美しい女性たちを見るたびに、美容に労力をかけようとしない玲子への不満が募っていった。
●前編:友人と起業、港区の最上階マンションを手に入れるほど成功したアラフォー男に“魔が差した”身勝手な理由
マッチングアプリで出会った女
それから数ヶ月の時がたった。
その日、歩はとある会員制バーの個室でワインを飲んでいた。目の前に並んでいるのは家では食べられない塩分高めの料理ばかり。歩はそんな料理に舌鼓を打っていた。
すると扉が開き、甘い匂いが部屋に入ってくる。
「あーくん、ごめんね、待った?」
「いいや、俺もさっき来たところだから」
彼女の名前は徳留亜里沙。モデル兼インフルエンサーをやっている。亜里沙と知り合ったのはマッチングアプリ。そこで出会い、仲良くなった。
「このバッグ、ありがとね~。もー、気に入ってずっと使っちゃってるの」
亜里沙はうれしそうにハイブランドのバッグを見せてきた。
「いや、気にするな。亜里沙なら、そのくらいのバッグは持っておかないとな。他にも欲しいものがあったら、何でも言っていいぞ」
「やったー! あーくん、大好き!」
亜里沙のうれしそうな顔を見て、歩の顔もほころぶ。
こんな気持ちは久しぶりだ。亜里沙と出会ってから、明らかに歩の生活には張りが出るようになった。これが欲していたものだと歩は確信していた。
「あーくん、今日は一緒にいられるよね?」
「ああ。アイツには仕事で遅くなるって言ってるから」
「……ねえ、いつまでこんなコソコソしないといけないの? 亜里沙、海外旅行とか行きたいんだけど」
亜里沙は不満を口にする。
「海外旅行か……」
息子が生まれてから、海外旅行には行けてなかった。
最後に海外へ行ったのは新婚旅行のハワイ。それもツアー会社の格安プランだった。しかし今はケチる必要はない。若くて美しい女と高級ホテルに泊まって豪遊ができる。そう思うとまた心が躍った。
「安心しろ、そのうちだよ」
「本当? いつまでも待たせないでね」
「分かっているさ」