遺言書で妻が唯一の相続人に

伯母はデザイナーの義伯父と結婚し、義伯父が亡くなった後には持ち家を処分して都内の高齢者施設で気ままな一人暮らしを楽しんでいました。特に持病があったわけでもなかったのですが2012年の冬の朝、ベッドの上で亡くなっているのが見つかりました。急性心筋梗塞だったそうです。

亡くなった時点で、存命の身内は妻の母親だけでした。遺産は義母が引き継ぐものと思っていたら、ある日、伯母から依頼を受けていたという弁護士から妻に連絡が入り、伯母が生前、妻に全財産を相続させるという遺言書を作成していたと知らされたのです。

伯母の遺産総額は億を超えていて、法定相続人ではない妻が2割加算の相続税を払っても、手元には6000万円以上が残りました。わが家にとっては目が飛び出るような大金です。

住宅ローンが当時で2000万円ほど残っていたので、一部を繰り上げ返済に回して登記で妻の持ち分を増やしたらどうかと提案したら、「伯母さんがせっかく私に残してくれたお金なんだから、これは自分のため使うつもり」とあえなく却下されました。

確かにそれは妻の言う通りですし、妻には日頃から苦労をかけているという思いがあったので、「半分くらいは貯蓄しておいた方がいいぞ」と冗談交じりに返したくらいで、あとは妻に任せていました。

同じ頃に義父も「少しはお母さんにも渡したらどうだ」と言ってきたそうですが、妻は弁護士に浅知恵をつけられたようで、「お母さんは姉妹だから遺留分(法律で保護された最低の相続分)の請求はできないはずよ」と拒絶したのだとか。