金利が上昇に転じた要因は?
その日本において、ようやく金利上昇の気配が見えてきました。三井住友アセットマネジメントが10月6日にリリースしたレポートのタイトルにもあるように、「金利のある世界」が示現してきたのです。
三井住友アセットマネジメントのレポートによると、「日銀は7月28日に、イールドカーブ・コントロール政策(YCC)の運用柔軟化を決定し、長期金利の事実上の許容上限を0.5%から1.0%に引き上げました。それ以降、長期金利は少しずつ水準を切り上げており、10月4日に一時0.805%を付けました。ついに、日銀の黒田前総裁が導入した量的・質的金融緩和(QQE)がスタートする前の水準に戻ってきました」ということです。
ここまで金利が上昇に転じた要因は、インフレです。一足先に物価が急上昇した欧米に続き、長年デフレ経済に悩まされた日本でも、インフレの兆しが見えてきました。
黒田前日銀総裁が導入した量的・質的金融緩和は、消費者物価指数で前年同月比2%、という物価目標を設定しましたが、8月の消費者物価指数は、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数で、前年同月比4.3%の上昇となり、政府・日銀が想定した物価上昇率を大きく上回っています。
もちろん物価上昇率を上回る賃金上昇率があれば、何も問題ありませんが、先般発表された7月の実質賃金は、前年同月比で2.5%減となり、16カ月連続でマイナスが続いています。
賃金の上昇率が、物価の上昇率を16カ月も下回っているということは、それだけ人々の生活水準が悪化していることを意味します。政府・日銀としては、この状況を看過することはできず、ある程度の金利上昇を容認せざるを得ないという状況なのでしょう。