住宅ローンだけじゃない! 金利上昇のさまざまな影響

金利の上昇は、他にもさまざまな影響を及ぼします。利払い増で苦しい状況に追い込まれるのは、住宅ローンを組んでいる人だけではありません。

国も国債発行によって多額の借金をしているため、国の財政状況が厳しくなり、公共サービスの内容が悪化する恐れが生じてきますし、株式市場で言えば、積極的に借入を増やして投資を行い、さらなる成長を追い掛けるような成長企業にとっては、資金調達コストの増加が業績にとってネガティブになることも考えられます。

昨今、グロース銘柄ではなくバリュー銘柄が堅調なのは、世界的な金利上昇による影響と考えられます。

さらに細かい点を言えば、J-REITにとっても金利の上昇はネガティブ要因になります。というのも、J-REITに投資している機関投資家は、常にJ-REITの分配金利回りと長期金利の利回り差を見て、どちらに投資するかを考えているからです。

この利回り差をイールドスプレッドと言うのですが、一般的にJ-REITの分配金利回りが長期金利を3%超上回っていると、J-REITが買われる傾向があります。現状、J-REITの平均分配金利回りは4.18%前後で、対する長期金利が0.8%ですから、イールドスプレッドは3.38%あります。

ただ、長期金利が1%を超えて上昇するような事態になると、イールドスプレッドが縮小して、J-REITにとってネガティブな環境になることも想定されます。

なお、ドル/円への影響ですが、一般的に金利上昇はその国の通貨の買い要因です。とはいえ、為替取引は相対的なものです。米国の長期金利が低下する一方で日本の長期金利が上昇すれば、円買い・ドル売りで円高が進むことも考えられますが、現状、米国の金利も上昇傾向をたどっているため、金利差が及ぼす為替レートへの影響は、中立です。円安は金利差以外の別要因によるものと考えられます。

このように、金利の動きは実体経済やマーケットに大きな影響を及ぼします。特に今は長期金利を中心にして上昇圧力が強まっていますから、「金利が上がったら生活にどのような影響が生じるのか」という視点を、常に持つことをお勧めします。