槇原浩さん(仮名)は30年以上、都内の下町にあるメーカーで働いています。勤務先はIT機器の部品を手掛けていて独自の技術への評価が高い一方、70代の創業社長は経営には素人同然で、生来の人の良さから採算の取れない仕事を平気で受けてくることもありました。その上コロナ禍で業績が急激に悪化し、社長は会社を手放して引退することを決意します。

新しいオーナーはIT企業の創業者で、子飼いの若手を連れて乗り込んできました。人事や給与体系などは大きく見直され、槇原さんは年収ベースで50万円近くの減収を余儀なくされました。

さらに間の悪いことに、槇原さんは戸建ての自宅を購入した際、10年固定金利の住宅ローンを組んでいて、来年早々には固定金利期間が終了します。そのタイミングで再度固定金利を設定するか、変動金利に移行するかを決めるのですが、金利の底でローンを借りていた槇原さんにとってはいずれにしても大きな負担増になりそうでした。

このままでは老後破産まっしぐらと頭を抱える槇原さんご夫妻を救ったのが、長女から紹介されたあるお金の専門家でした。

「いただいた助言はどれも目からウロコで、大変有用でした。素人の浅知恵では限界があり、今回の経験を通してプロの意見を聞いてみることの大切さを痛感しました」。そう語る槇原さんが見事崖っぷちから脱出するに至った体験を、ご本人に振り返ってもらいました。

〈槇原浩さんプロフィール〉

千葉県在住
51歳
男性
部品メーカー勤務
パートの妻、社会人の長女・長男と4人家族
金融資産350万円

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数年前、老後資金2000万円不足問題がメディアなどで大きく取り上げられた時は40代で、正直、自分ごとという感覚はあまりありませんでした。私と同じ中小企業のサラリーマンだった親も特にお金に困ったふうもなくリタイアライフを楽しんでいるように見え、自分の老後に対して楽観的に構えていたのです。