外貨建ての日本国債
1870年4月23日、鉄道施設の資金調達のために日本で初めて国債が発行されました。そのときの国債は、外貨建てでした。その後も、明治から大正にかけて公共事業や戦費調達のためには外貨に頼らざるをえなかったことから、外貨国債を発行していきます。1870年から1930年にかけて22銘柄の外貨国債が発行されました。
第二次世界大戦後は、外債の発行は長期間中断されていました。しかし、1958年に「産業投資特別会計の貸付の財源に充てるための外貨債の発行に関する法律 ※1」が制定されています。
※1 産業投資特別会計とは財政投融資の一環として出資や貸付けを行った特別会計。その貸し付けの財源に充てるため発行される外貨債の発行根拠法。
この法律に基づいて、1959年1月に米国で発行された第一回産業投資米貨公債の収入金は、産業投資特別会計を通じて電源開発株式会社に貸付けられました。
また、1963年には「外貨公債の発行に関する法律」が制定されました。以後同法に基づき、産業投資特別会計による外貨国債の発行が行われ、米国で1銘柄、西ドイツ(当時)において2銘柄、スイスにおいて2銘柄発行されています。それらの収入金は、日本開発銀行を通じた産業資金供給、日本道路公団の事業資金などに活用されました。
「外貨公債の発行に関する法律」(外貨公債の発行)
第一条 政府は、財政投融資特別会計の投資勘定の貸付けの財源に充てるため、同勘定の負担において、外国通貨をもつて表示する公債(以下「外貨債」という。)を発行することができる。
2 前項の規定による外貨債の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。
3 第一項に定めるもののほか、政府は、外貨債を失つた者に対し交付するため必要があるときは、外貨債を発行することができる。
(準用)
第四条 第一条第三項及び前二条の規定は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条第一項ただし書の規定により発行する外貨債、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第四十六条第一項及び第四十七条の第一項規定により外貨債の整理又は償還のため発行する外貨債並びに同法第六十二条第一項の規定により発行する外貨債について準用する。
一般会計予算の上で外貨建て国債を発行するため、1986年5月に「外貨公債の発行に関する法律」が改正されました。しかし、現在まで発行実績はありません。つまり、法律上、外貨建ての国債を発行できるようにしたものの、それによる国債は発行されていないということです。
ただし、この法律が存在する以上、いつでも外貨建ての日本国債は発行できることになります。
●第3回(「特例」という言葉自体も意味をなさない…なぜ毎年度「特例国債」は発行され続けるのか)では、社会基盤を整備するための建設国債のしくみと、特例国債の発行の歴史について解説します。
『知っているようで知らない国債のしくみ』
久保田博幸 著
発行所 池田書店
定価 1,870円(税込)