政府が閣議決定した『骨太の方針2023』と、それに続く政府税制調査会が岸田総理に提出した資料から「退職所得税制の見直し」という言葉が飛び出し、退職金に対する課税が強化されるのでは? という話題がメディアをにぎわせています。

そもそも、現状の退職所得税制はどうなっているのでしょうか? 今回は、退職金にかかる税金と、それをとりまく問題点について掘り下げてみたいと思います。

退職金は受け取り方でかかる税金が全く違う!

退職金は、会社の制度によって「一時金」「年金(分割)」「一時金と年金(分割)の組み合わせ」という3つの受け取り方が選択できる場合があります。しかし、ほとんどの人が「一時金」での受け取りを選択する傾向があります。

それは、なぜかと言うと、退職金は一時金で受け取るほうが、年金で受け取るより税負担が少なくて済むような制度があるからです。

一時金(一括で全額受け取り)

まず、退職金を一時金、つまり一括で全額受け取る場合は、勤続年数に応じた「退職所得控除」が受けられるだけでなく、控除した残額の2分の1の額にしか課税されません。

さらに他の所得とは分けて課税される「分離課税」が適用されるため、多額の一時金を受け取っても、他の所得と合算されず、健康保険料などの社会保険料が高くなる心配もありません。

年金(分割で受け取り)

一方、年金で受け取った場合は、同じ退職金であるにもかかわらず、「退職所得控除」は適用されません。代わりに「公的年金等控除」が受けられるわけですが、控除額はかなり少なく、65歳未満で60万円以上、65歳以上で110万円以上の受け取りがあると、課税の対象になります。

しかも、厳しいことに公的年金やiDeCoなど他の公的年金等控除の対象となる年金を同時に受け取る場合は、すべて合算しなければなりません。控除後の残額には2分の1課税のような優遇もなく、雑所得扱いで「総合課税」され、社会保険料の金額にも影響が出ます。