どう見直されるかはまだ発表されていない
一部では、勤続年数が20年超からの優遇措置がなくなる方向と報じられていますが、実際のところ、政府も税制調査会も具体的な見直し案は、まだ発表していません(2023年7月時点)。
独立行政法人労働政策研究・研修機構のユースフル労働統計2022によれば、日本の労働者の平均勤続年数は男性で13.1年、女性で9.7年となっています。勤続20年超の人を優遇する制度があっても、その恩恵を受けられる人は減っていると言えます。
厚生労働省の就労条件総合調査の退職給付(一時金・年金)の支給実態(平成30年度)を見ても、勤続年数20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業は、全体の26.6%にすぎません。ただし、そのうち常用労働者が1000人以上の大きな会社は、勤続年数20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業は74.2%でした。
つまり、勤続年数20年以上の退職者は、大企業に多い傾向があることがわかります。仮に、世間で言われているような、勤続20年超の控除額の見直しが行われるとすれば、大企業のサラリーマンへの影響が大きいということになります。
しかし、多くの人は関係がないのかと言えば、実はそうとも言えません。退職所得控除の対象となるのは、退職一時金だけではないからです。
iDeCoの一時金、個人事業主が積み立てている小規模企業共済の一時金、転職者が企業年金ポータビリティ制度を活用して、勤続年数を通算した結果20年超となった人など、コツコツ自分で資産形成の努力をしてきた人たちにも影響が及んでしまいます。
<退職金以外で退職所得控除の対象となるもの>
●iDeCoの一時金
●小規模企業共済の一時金
●DB・企業型DCの一時金
●中小企業退職金共済の一時金 など