退職所得課税の見直しで転職は増える? 政府の狙いは?
そもそも「退職所得課税制度の見直し」は、政府が『骨太の方針2023』で掲げた「成長分野への労働移動の円滑化」への取り組みの1つとして発表されたものです。
その前に「自己都合退職の場合の退職金の減額といった労働慣行の見直し」に向けて「モデル就業規則」の改正を行うという文章も書かれていました。
政府の狙いが、「労働移動の円滑化」であるとすれば、勤続年数が長い人への優遇見直しより、自己都合退職で退職金が減るといった慣行がなくなるほうが、功を奏すような気がします。
実際に、ユースフル労働統計2022によると、同一企業に勤続して定年退職したときに受け取る退職金と、一度だけ転職を経験してその後定年退職した場合の退職金(転職時の退職金と定年退職時の退職金の合計)を比較すると、転職経験者の退職金のほうが少ないことがわかります。
データを見る限り、現状は、転職すると生涯賃金も減るという状況が続いているわけです。
1つの会社に定年まで勤める人が減り、退職金制度もDBや企業型DCといった企業年金の導入が増えるなか、勤続年数を重視した時代に合わない古い制度や労働慣行が続いているのは間違いないのでしょう。
今後、政府がどのような見直し案を打ち出してくるかは不明ですが、退職所得課税制度に限らず、働く人をとりまく、さまざまな制度の見直しにも合わせて目を向けていく必要がありそうです。