将来価値と現在価値の不思議な関係
あなたは5年後の100万円の現在価値を86.3万円と計算しました。このときの割引率は3%です。今度は、86.3万円を年率3%で運用した場合の5年後の将来価値を求めてみましょう。
答えは、86.3万円×(1+3%)^5≒100万円となります。86.3万円を割引率と同じ年率3%で運用すれば、5年後には100万円になるわけです。つまり、今日の86.3万円と5年後の100万円の価値が同じであるということです。
現在価値から将来価値を求めるときの利率を要求(期待)収益率といいます。そして、将来価値を現在価値に割り引くとき使うのが割引率(ディスカウントレート)です。
実は、割引率と要求(期待)収益率は表裏一体の関係になっています。ここまでの説明では、割引率(要求収益率)は定期預金の利率3%を使っていました。定期預金のように、5年後にほぼ間違いなく支払われるのと違い、株式に投資した場合のリターンのようにリスク ※4が高い場合は割引率(要求収益率)を高くします。
※4 ここでは「不確実性」と読み替えてください。
リスクが高い投資をするときは、それ相応の高い収益率を要求すべきだからです。これを、ハイリスク・ハイリターンの原則といいます。
次に、割引率を変化させてみましょう。
割引率が高くなればなるほど、「5年後の100万円」の現在価値が減少していくことがわかります。この割引率と現在価値の関係は重要です。
『増補改訂版 道具としてのファイナンス』
石野雄一 著
発行所 日本実業出版社
定価 2,750円(税込)