米国のオフィス空室率が日本の投資家に与える影響
日本の投資家が特にどういう点で影響を受けるかと言えば、米国に上場されているREIT(不動産投資信託)を組み入れた投資信託が、日本国内でも設定・運用されており、その運用成績に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。
S&P米国REIT指数は、2020年3月に起こったコロナショックの時に97.38ポイントまで急落した後、徐々に回復傾向をたどり、2022年1月には197.51ポイントまで上昇しました。これが過去最高値です。
しかし、そこから経済は再開に向けて大きく舵を切りましたが、2023年6月14日時点では143.65ポイントまで低下しました。この1年半で、27.26%も下落したことになります。
フィデリティ投信の顧客向け資料である「マンスリー・ウォッチ」の2023年5月号では、米国REIT市場が取り上げられており、そのなかで2023年4月までの過去1年間における米国REIT市場のセクター別騰落率が掲載されています。
ざっと挙げると以下のようになります。
●米国リート業種別騰落率
・特殊=+8.5%
・小売=▲5.5%
・データセンター=▲9.6%
・倉庫=▲12.5%
・複合施設=▲14.3%
・物流=▲14.7%
・ヘルスケア=▲14.8%
・住宅=▲19.5%
・インフラストラクチャー=▲21.5%
・ホテル/リゾート=▲21.7%
・林業=▲22.3%
・オフィス=▲44.4%
出所:フィデリティ投信「マンスリー・ウォッチ」(2023年5月号)
総じてマイナスですが、中でもオフィスの下落率が極めて大きいことが見て取れます。
このように、米国不動産市況の悪化によって米国REITのパフォーマンスが低迷すれば、それを投資対象としている、日本国内で設定・運用されている米国REIT投信の運用成績も厳しくなります。
4月末現在、日本国内で設定・運用されている米国REIT投信(ヘッジ無)の本数は、全部で33本あります。その過去1年間騰落率は、平均▲13.5%でした。
また、同じく4月末現在における、日本のリートを投資対象とした国内REIT投信76本の過去1年間騰落率は、平均で▲1.5%でした。同期間中における運用成績では、米国REIT投信が、国内REIT投信に対して大きく劣後しているのが分かります。
これは明らかに、経済再開後もオフィスを中心にして不動産市況が回復しないことによる影響と考えられます。