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2022年からドル円は円安傾向が続いています。同年9月には24年ぶりに為替介入が行われ、一部では「通貨危機」を指摘するような声も聞かれるようになりました。

【ドル円(日足終値)】

Investing.comより著者作成

通貨危機に陥るとどのような状況に追い込まれるのでしょうか。「アジア通貨危機」の例を振り返ってみましょう。

バーツを支えきれなくなったタイ

1997年7月2日、タイはそれまでの「ドルペッグ制」(※)を放棄し、変動相場制に追い込まれました。ドルペッグ制とは、自国通貨のレートを米ドルと連動させる為替制度です。

※タイは複数の通貨への連動を目指すバスケット方式だったが、米ドルへのウエートが85%に達していたとみられ、実質的なドルペッグ制だった。

ドルペッグ制を採用し基軸通貨である米ドルと連動させると、外国からその国への投資は為替リスクが低減することになります。また工業品などを輸入に頼ることが多い新興国においては、輸入物価が安定することからインフレを抑える効果にも期待できます。

ただし、ドルペッグ制を宣言したからといって、市場がそれを受け入れるとは限りません。アメリカと経済的な条件が合致しない場合、その国の通貨は不当に高い(あるいは不当に安い)レートで取引されることとなり、価格形成に歪みが生じます。歪みは市場から修正の圧力を受け、ドルペッグ制を採用する国は為替介入などで抵抗することになります。

アジア通貨危機は、その抵抗が市場の圧力に負けた事件です。アメリカは1995年ごろから「強いドル」政策を採るようになり、米ドルの上昇が続いていました。ドルペッグ制を採用するタイは自国通貨のバーツを米ドルへ追随させるよう仕向けた結果、バーツは実力に見合わない高いレートで取引されるようになります。

この歪みがヘッジファンドの目に留まり、バーツは大量の売りを呼び込みました。タイは外貨準備を取り崩してバーツを買い支えますが、売り手の攻勢はやまず、1997年7月に変動相場制へ追い込まれます。バーツは急落し、対円では50%以上下落しました。

【タイバーツ円の推移(月足、1996年1月~1998年12月)】

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