基礎となる3つの通貨ペア

マーケット用語で「ドル円」「ユーロ円」といった2つの通貨の組み合わせのことを「通貨ペア」と呼びますが、先述したように、通貨ごとの強弱を知るためには、1つの通貨ペアを見るだけではなく、複数の通貨ペアの動きを比較してみてください。

そうすると、いま最も買われている通貨や、いま最も売られている通貨がより鮮明にわかるようになるはずです。

「そうはいってもそんなにたくさん見られないよ!」という方のために、いま為替相場全体の値動きを牽引しているのはどの通貨かを最も簡単に知る方法をお伝えします。それは、「ドル円」と「ユーロ円」と、「ユーロドル」(ユーロの対ドル・レート)の3つの通貨ペアだけを、同時にチェックすることです。

たとえば、ある1週間で、ドル円が1ドル=120円から130円に変動した場合、1ドルの価値が対円で上昇しているので、ドル高・円安です。

それと同時にユーロ円の動きをチェックしたら、あまり変動しておらず、1ユーロ=132円付近で膠着していたとします。これだと、ドル高・円安であることだけははっきりしていても、何となく為替相場の全体像は見えません。そこでユーロドルを見ることにします。

同じ期間で見たとき、ユーロドルが1ユーロ=1.1ドルから1.01ドルに下落していたとします。これは、1ユーロの価値が対ドルで下落しているので、ユーロ安・ドル高です。

つまり、この場合の3つの通貨ペアの関係を整理すると、次のようになります。

ドル円=ドル高・円安
ユーロ円=横ばい
ユーロドル=ユーロ安・ドル高

このように見ると、この期間に起こったことは、ドル高相場であったということがわかります。3つの通貨ペアが、「ドル高」「円安」「ユーロ安」「ドル高」となるときの相互の動きは図表1-3のようになります。

図表1-3:3つの通貨ペアを見ると動きの意味がわかる
—ドル円、ユーロ円、ユーロドルの関係

これを見ると、たとえば「ドル高」の場合には、ドル円、ユーロドルは動くものの、ドルとは関係がないユーロ円は動かないことがわかります。

これらはやや極端な例ですが、対円だけでなく、対ドル相場も合わせて見ることによって、通貨の強弱の全体像がより鮮明に見えるようになります。

また、なぜこの3通貨ペアが重要かといえば、世界的なマーケットの基準では、ドルが基軸通貨であり、ユーロは第二の取引量を誇る主要通貨、円も3番目に取引量が多い通貨ということもあって、ドルやユーロや円が、時として為替市場全体の動きを牽引し、大きな相場のトレンド(傾向)を形成することがあるからです。

このため、最低でもこの3通貨ペアは常に値動きを比較して、「いまの相場のトレンドを形成しているのは、ドル高なのか、円安なのか」といった具合に、相場の全体像を把握していれば、次に売買のアクションを起こす際にはどのニュースに注目すべきか、どういった情報を判断材料にすべきかが見えてくるはずです。

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