米国の利上げ基調を背景に、円安・ドル高が進んだ2022年。一時1ドル150円台をつけたり、政府・日銀による約24年ぶりの円買い・ドル売り介入が実行されるなど、為替にまつわるニュースが注目された1年でした。また、投信投資家にとっても、所有する投資信託の種類によっては基準価額に為替が影響するケースもあり、為替市場に対する理解を深めたいと感じた人も多いでしょう。

話題の書籍『〈最新版〉本当にわかる 為替相場』では、トップアナリスト・尾河眞樹氏が、豊富な現場経験に基づく考察をまじえながら為替市場の仕組みから相場の変動要因の真相まで詳しく解説。今回は本書冒頭の「まえがき」、第1章「そもそも為替レートとは?」を特別に公開します。

●第1回:歴史的円安、日銀の為替介入…激動の2022年為替相場から学ぶべきこと

※本稿は、尾河眞樹著『〈最新版〉本当にわかる 為替相場』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

日本の報道は、ほとんど円が中心

私たちは日本で暮らし、生活しています。そのため、たとえば私たちが海外旅行をする場合、あるいはビジネス上で海外と取引がある場合、当然、日本の通貨である円の価値がどうなるかが最大の関心事です。

したがって、テレビや新聞などで、為替レートの変動が報道されるときは、「円高」「円安」というように、円を中心に語られます。「円高」と言われれば、外貨に対して円の価値が強くなっていることですし、「円安」なら、外貨に対して円が弱い状況であることが、すぐにイメージできるからです。

ただ、外貨で運用する場合、円だけを中心にして為替レートを見てしまうと、そこから得られる情報がやや偏ってしまうので注意が必要です。

たとえば、2022年は年初来約38円50銭もの円安・ドル高が進み、10月21日には一時、1ドル=152円に迫る勢いとなりました。折しも、高水準の原油価格や円安などを背景に、日本でも物価が上昇。

生活必需品などの相次ぐ値上げは家計にとって厳しく、いわゆる「円安脅威論」がメディアで多く取り上げられるようになり、とくに同年9月に政府・日銀が、約24年ぶりとなる円買い介入に踏み切ると、ワイドショーでも「円安特集」の企画が組まれるなど、国民の間でも円安への関心が高まっていました。

こうしたなか、新聞やネットニュースでは「円急落、一時152円に迫る円安水準」「加速する円安、いつまで続く?」といった見出しが躍り、円安が大々的に報道されていたのです。