どの通貨に対して円高だったかをチェック
新型コロナウィルスのパンデミックによってサプライチェーンが混乱し、回復もままならないうちに欧米中心に経済活動が再開、需給ひっ迫ですでにインフレ圧力がかかっていたところへ、ウクライナ危機で原油価格が急騰し、さらにインフレが加速しました。
FRBの利上げペースが速まるなか、米金利上昇に伴ってドルが上昇する一方で、日本では日銀の緩和的な政策が変わらないなか、円金利は低迷。これに加えて貿易収支・経常収支が悪化したことも円安圧力につながり、ドル高と円安のトレンドが同時に続いたのです。
このように、通貨の強弱を把握することは、為替相場の変動要因を分析するうえでも非常に重要であり、そのためには、ドル円だけでなく、あらゆる通貨の値動きをチェックすることが必要なのです。
そもそも外国為替とは、英語で「Foreign Exchange」と言うように、1つの通貨を別の通貨に「Exchange=交換」することであり、その交換レートが為替レートです。したがって、為替レートは2つの通貨の相対的な価値を示していますから、株式などの「資産価格」とは意味が違います。
株価であれば、ある銘柄の価格(レート)が大きくなれば「上昇」、小さくなれば「下落」です。しかし、為替レートの場合、ドル円レートの数字が大きくなっているのは、ドルが円に対して上昇しているということであって、その反対に円はドルに対して下落していることを示しているのです。
朝、新聞を見たときに、「1日で約8円もの円高が進行」という1行を目にしたときには、どの通貨に対して円高が進んだのかを考えてみることをお勧めします。
もしこれが対ドルでの円上昇を意味するのであれば、「ドル円で約8円もの円高」あるいは、「8円ものドル安・円高」、「ドル円が約8円も下落」などという表現が正解です。