米国の利上げ基調を背景に、円安・ドル高が進んだ2022年。一時1ドル150円台をつけたり、政府・日銀による約24年ぶりの円買い・ドル売り介入が実行されるなど、為替にまつわるニュースが注目された1年でした。また、投信投資家にとっても、所有する投資信託の種類によっては基準価額に為替が影響するケースもあり、為替市場に対する理解を深めたいと感じた人も多いでしょう。
話題の書籍『〈最新版〉本当にわかる 為替相場』では、トップアナリスト・尾河眞樹氏が、豊富な現場経験に基づく考察をまじえながら為替市場の仕組みから相場の変動要因の真相まで詳しく解説。今回は本書冒頭の「まえがき」、第1章「そもそも為替レートとは?」を特別に公開します。
※本稿は、尾河眞樹著『〈最新版〉本当にわかる 為替相場』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
大相場を思い知らされた2022年
2022年は、長らく外為市場に向き合っている筆者にとっても、正に「記憶に残る1年」となりました。ドル円相場は10月に151円95銭と、32年ぶりの円安・ドル高水準を付け、これに先立ち9月には、政府・日銀が24年ぶりとなる円買い介入に踏み切りました。
同年は、ほかにも歴史的な出来事が目立ちました。新型コロナの影響が世界各地で残るなか、2月のロシアによるウクライナ侵攻は、原油や天然ガスといった資源価格の急騰を招きました。米国は40年ぶりの物価上昇に苦しみ、ユーロ圏でもインフレ率が過去最高となるなど世界的にインフレが加速。
欧米の中央銀行は、正に歴史的といえるハイペースな利上げに追い込まれました。また、地球温暖化により世界各地が記録的な自然災害に見舞われました。とくに欧州では熱波により山火事が多発したほか、ドイツのライン川の水位低下で、物流に影響を及ぼす事態となりました。
そして、これらの出来事すべてが、世界各国の為替レートに影響を及ぼしたのです。実際に、世界の政治経済と金融市場はすべてがつながっているのだということを、改めて思い知らされた1年となりました。「歴史は繰り返す」と言いますが、こうした歴史的な事象による為替相場への影響は、今後の為替相場を予測するうえでも必ず参考になるはずです。