為替の見極めに大切なのは「相場観」

ところで、2022年の大相場を経て、ひとつ嬉しいことがありました。筆者は某通信社の運営するホームページ上に、月1回コラムを寄稿しているのですが、担当の編集者から2022年末にいただいたご挨拶のメールに、次のように書かれていました。

「相場が大荒れとなった1年でしたが、相場の読みの鋭さに敬服するばかりです。理論に加えて、ご経験に基づく実践的な勘があるのでしょうか」

まさに、アナリスト冥利に尽きる一言で、ご興味を持ってコラムを読んでいただいている読者に対し、少しでもお役に立てたのではないか、と実感できた瞬間でした。

本記事で解説しているとおり、為替相場はさまざまな要因で動きます。為替相場を分析するにあたっては、経済理論や統計などの基礎的な知識が必要です。しかし、相場が必ず理論どおりに動いてくれればよいのですが、実際にはなかなかそうはいかないのがむずかしいところです。

たとえば、先にも述べたロシアのウクライナ侵攻ですが、事前予測では、理論的に考えればまず起きないだろうといわれていました。しかし、実際には起きてしまい、世界経済や金融市場に極めて大きな影響を及ぼしました。政治も経済も金融市場も、結局は人間が動かしているのであって、時にロジックでは説明できないことが起こり得るのです。

また、もうひとつ相場のむずかしいところは、既に起こった事実ではなく、市場参加者の「期待」で大きく動くところです。このため、「市場参加者の多くは、今後何に注目するだろうか」、「今後、相場のどういった点に市場参加者の期待が高まりそうか」というように、人々の心理を読み解く力も必要になってきます。

これこそ、マーケットの非常に人間味のある、面白いところでもあるのです。