米国の利上げ基調を背景に、円安・ドル高が進んだ2022年。一時1ドル150円台をつけたり、政府・日銀による約24年ぶりの円買い・ドル売り介入が実行されるなど、為替にまつわるニュースが注目された1年でした。また、投信投資家にとっても、所有する投資信託の種類によっては基準価額に為替が影響するケースもあり、為替市場に対する理解を深めたいと感じた人も多いでしょう。

話題の書籍『〈最新版〉本当にわかる 為替相場』では、トップアナリスト・尾河眞樹氏が、豊富な現場経験に基づく考察をまじえながら為替市場の仕組みから相場の変動要因の真相まで詳しく解説。今回は本書冒頭の「まえがき」、第1章「そもそも為替レートとは?」を特別に公開します。

●第2回:まずは“この3つの通貨レート”をチェックせよ!  為替のトレンドをつかむ王道とは

※本稿は、尾河眞樹著『〈最新版〉本当にわかる 為替相場』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

ビッドとオファーってなに?

さて、ここからは為替レートそのものについて、もう少し詳しく見ていきましょう。為替レートについて説明するうえで、ビッド(Bid)とオファー(Offer)の存在を無視するわけにいきませんので、まずはそこから解説していきます。

テレビニュースで為替相場について報道されるとき、「円相場は現在1ドル=135円10銭から135円15銭で取引されています」などと表現されます。

あるいは、日本経済新聞のマーケット総合面にある「外為市場」の記載を見ると、円相場の前日の終値が、「135円10銭-135円15銭」などと書かれています。

なぜ、必ず2つのレートが存在するのでしょうか?

実は、これがビッド(買い値)とオファー(売り値)なのです。誰にとっての買い値であり、売り値なのかというと、レートを提示している人たち(=銀行)にとっての買い値や売り値になります。

たとえば個人が銀行に行って、外国為替取引を行なう際にも2つのレートが提示されています。個人が円を売ってドルを買う場合はTTS(Telegraphic Transfer Selling Rate=銀行が顧客にドルを売るレート)を使いますし、ドルを売って円を買う場合はTTB(Telegraphic Transfer Buying Rate=銀行が顧客からドルを買うレート)を使います。

この、銀行が顧客からドルを買うBuying Rateのことを、銀行間市場(インターバンク市場)ではビッドといい、銀行がドルを売るSelling Rateのことをオファーと呼びます。

このケースでいうとビッドが135円10銭、オファーが135円15銭ですから、「135円10銭から15銭のあいだで取引されている」というのではなく、「ビッドが135円10銭、オファーが135円15銭」と表現したほうが、より正確です。