結局、老後の生活を楽にするには、どうしたらいいんでしょうか…

――自分たちの世代はやはり、老後のお金がより多く必要となるんですね。

長尾FP:1年間生きていたら、最低限の暮らしをしても200万円から300万円はかかります。もちろん、ときどきレジャーや旅行を楽しみたいのなら、もっとずっとお金が必要になります。

――贅沢をしなくても、けっこうなお金がかかるでしょうね。

長尾FP:それに老後に必要なのは、生活費とちょっと楽しむためのお金だけではありません。ここのところを、しっかり頭に入れておく必要があります。

年を取ったら、いろいろな病気にかかりやすくなりますし、介護の問題も出てきます。マンションや持ち家に住んでいる場合、10年や20年に1回ほどはリフォームも必要になるでしょう。

そういったプラスアルファの資金は、生活費とは別に用意しておかなければいけません。もしものときの出費を考えておかないと、長い老後生活をおくっていくなかで、間違いなく破綻してしまいますよ。

要するに、長生きすればするほどお金が必要になる、ということです。2020年の日本人の平均寿命を見ると、男性が前年よりも0.23歳延びて81.64歳、女性が0.29歳延びて87.74歳になりました。

――わたしは55歳なので、平均的な寿命をまっとうすると、あと26〜27年の人生があるというわけですね。

長尾FP:平均寿命とは0歳の平均余命のことです。55歳の平均余命は男性が28.58歳、女性が34.09歳なので、あなたの場合、データ上ではもう少し生きて、83〜84歳で天寿を迎えることになります。

しかし、平均寿命は年々長くなっていますので、90歳を超えるまで長生きすると思っていたほうがいいでしょう。

――うちは長寿の家系らしくて、父や母、親族の上の年代が軒並み80代半ばから90代ばかりで、まだみな元気なんですよ。わたしも長生きするんじゃないかな。うれしいことなんですが、お金のことを考えたら……。

長尾FP:楽に暮らすためにはどうすればいいのか、ですよね。答えはシンプルで、長く働くのがいちばんですよ。

寿命が延び、高齢者の数が増えていくのに連動して、会社の定年も延びる傾向にあります。2013年に「高年齢者雇用安定法」が改正され、定年が60歳から65歳へと引き上げられました。

現在は努力義務の経過措置期間ですが、2025年から義務化されることが決まっています。いま50代半ば以下の会社員や公務員は、65歳まで働ける環境が整えられるわけです。

また、2021年には定年を70歳に引き上げることが努力義務になりました。これも数年後には義務化されるでしょう。ごく近い将来、70歳まで働くことが当たり前の社会になるんですよ。

――でも正直なところ、70歳まで働く自分、というのは想像がつきません。ちょっと想定外? って感じですね。

長尾FP:そんな甘いことは言っていられませんよ。長く働くというのはとても大事。老後を楽にするための最大のポイントなんです。

●第3回(何もしなければ、老後は“相当厳しい生活”に…会社員&専業主婦の年金受給額は)では、50代こそ知っておきたい年金の基本的な仕組みについて解説します。

『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』

長尾義弘 著
発行所 青春出版社
定価 1,100円(税込)