2.退職年金制度の特徴と種類

退職年金制度は、退職時の給付を一時金、または年金のように分割して受け取ることが可能な制度です。一般的に企業年金と呼ばれます。現在は主に次の3つの制度があり、1つまたは2つ以上の制度を組み合わせて採用している企業もあります。

<退職年金制度の種類>

a.確定給付企業年金(DB)
企業が掛金を拠出し、あらかじめ給付額が確定している。
会社または基金のルールで一時金、5~20年の分割受け取り、一時金と分割受け取りの組み合わせが選択できる。終身で受け取れる場合もある。分割で受け取る場合は、受け取り期間中、給付利率と呼ばれるあらかじめ約束された利息が付与される。
近年は、給付利率が市場金利と連動するキャッシュバランスプラン(CBP)を採用する企業も増えている。

b.企業型確定拠出年金(DC)
企業が掛金を拠出し、従業員は会社が提供する金融商品のラインナップから投資先を選び運用する。本人の運用次第で受取り時の金額が変化する。
退職年齢に関係なく、原則60~75歳の間で希望する時期に一時金または年金で支給。一時金と年金を組み合わせてもらえる場合が多い。
最近は、従業員の退職金または給与を原資として、前払い(給料)として受け取るか、DCに拠出するかを従業員自らに選ばせる「選択制確定拠出年金(選択制DC)」を採用する企業も増えている。

c.中小企業退職金共済(中退共)
中小企業向けの退職金制度。
事業主が中退共と退職共済契約を結び、毎月掛金を納付。従業員が退職した時は、本人が中退共から直接一時金または年金の給付を受ける。
勤続1年以上で退職一時金が支給され、60歳以上なら一時金、分割、両方の組み合わせが選べる。ただし、金額が80万円未満の場合は一時金のみ。

上記のほか、かつては厚生年金基金や企業が生命保険会社や信託銀行等と契約して、外部機関に年金原資を積み立てる「適格退職年金制度」があり、これが主流となっていました。しかし、少子高齢化や経済の低迷などで運用が悪化したため厚生年金基金のほとんどが解散してしまい、今では新設が認められていません。

また、適格退職年金制度も法改正により税優遇が受けられなくなったことで他制度への移行が進み、適格退職年金制度は実質廃止状態となっています。

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制度を比較してみると、受け取り方の選択肢やルールがそれぞれ異なることが分かると思います。もちろん、今回紹介したものとは別の制度を採用している企業もあります。

また、よく「退職金は一時金で受け取るのと、年金で受け取るのではどちらが得か?」といった記事を目にする機会も多いと思います。しかし、自分の会社の制度が「退職一時金制度のみ」の場合は、そもそも原則として一時金でしか受け取ることができません。

繰り返すようですが、皆さんが1番知っておくべきは、自分が勤めている会社がどの制度を採用しているかということです。まずは、自分の会社の制度をよく確認し、分からないことは会社の担当者に聞くことをおすすめします。そして、自分の退職金のもらい方にどのような選択肢があるのかを調べてみてはいかがでしょうか。