2022年5月から、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢が65歳まで引き上げられます。60歳でiDeCoや企業型確定拠出年金(DC)の加入者資格を喪失された方が、iDeCoの「加入者」を選択できるようになりました。その対象者は300万人以上と考えられます。

60代のiDeCo活用について、「受給」に着目して、考えてみましょう。

DCの受給に関する3つの期間

DCの「受給」を考える際には、3つの「期間」がかかわってきます。①通算加入者等期間、②通算拠出期間、③退職所得控除を計算する際の税法上の勤続期間、です。それぞれの期間についての特徴と注意点は、下記のとおりです。

【通算加入者等期間】
通算加入者等期間とは、60歳までの間の下記の期間を足し合わせたものとなります。
・企業型DCの加入者期間および運用指図者期間
・iDeCoの加入者期間および運用指図者期間
・他の企業年金制度等からの資産移換があった場合は、資産の移換の対象となった期間
通算加入者等期間は、老齢給付金の受給開始可能時期の判定に用いられます。たとえば、60歳から老齢給付金を受け取るためには、通算加入者等期間が10年以上必要です。期間が10年未満の場合、8年以上であれば61歳から、6年~8年未満は62歳から、4年~6年未満は63歳から、2年~4年未満は64歳から、1月~2年未満は65歳から、DCの受取が可能となります。

また、転職等により他の企業型DCや確定給付企業年金等からの資産を移換した場合は、過去に加入していた企業年金制度等の加入期間も足し合わせることができます。注意点としては、通算加入者等期間は60歳までの期間で計算する点です。法改正により、企業型DCもiDeCoも60歳以降の「加入」が可能になっていますが、60歳以降の「加入」期間は通算加入者等期間に算入されません。

そのため、60歳を超えてはじめてDCを活用する場合は、加入から5年経過後から受給開始可能となります。

【通算拠出期間】
通算拠出期間は、iDeCoの脱退一時金(一定の要件を満たした制度脱退者に特例として支給される一時金)の支給要件の一つとして用いられます。脱退一時金を受給するためには、通算拠出期間が1月以上5年以下(注:2021年3月以前は3年以下)であることが要件とされています。

通算拠出期間は、企業型DCやiDeCoの「加入」期間を合算した期間(他制度からの資産移換に伴い算入した期間を含む)です。前述の通算加入者等期間とは異なり、運用指図者期間は含まれません。

【所得税法上の「勤続年数」】
DCの老齢給付金を一時金で受け取る場合は、退職所得として退職所得控除が適用されます。退職金は老齢期の生活を支える重要な資産である、という位置づけから税優遇があります。

退職所得控除は「勤続年数」で計算しますが、DCの場合は勤続年数を「加入者期間=掛金を拠出した期間」と読み替えます(企業型DCとiDeCoに同時加入している場合は、両者の加入者期間が重複していない期間のみをカウント)。

DCの老齢給付金を一時金で受け取る場合、加入者期間(=掛金を拠出する期間)を極力長くして退職所得控除額を最大化することが税制上有利といえます。

つまり、60歳以降にiDeCoに加入することは、退職所得控除を大きくすることにつながるわけです。