政府は106万円と130万円の壁を見直し
政府が課題として挙げている年収の壁は、106万円と130万円。これらの額を超える際に生じる社会保険料について、政府が一時的に「肩代わり」する案を検討している。今年3月17日に行われた岸田首相の記者会見でも「さらに制度の見直しに取り組む」と言及があり、将来的には年収の壁そのものをなくしていくための制度の見直しが念頭にあると考えられる。
社会保険料の負担額は大きく、年収の壁のなかでもとくに就業調整に繋がりやすい。壁の解消で、パートで働く主婦(夫)がより長く働きやすくなるというメリットは期待できそうだ。
さらに、働き控えのなくなったパート労働者を確保するため、イオンなどの大手小売業が行っていた賃上げの流れが、中小規模の事業所まで波及する可能性もある。慢性的な人手不足の解消が業績の後押しとなる業種も少なくないだろう。
一方、国による社会保険料の「肩代わり」には課題もある。制度の恩恵を受けられるのは、正社員の配偶者を持つ第3号被保険者のみ。個人事業主やその配偶者などの第1号被保険者や単身者は、変わらず保険料を負担することになる。これに対して被保険者間の公平性を欠くという指摘もある。
いずれにせよ、非正規雇用労働者の手取り額や世帯年収が、労働者本人の年収だけではなく、雇用条件や配偶者の年収にも左右されることは確かだ。さらに、勤務先の福利厚生制度にも影響されることもある。
例えば、第2号被保険者の勤務先が支給することもある「扶養手当」は、配偶者の年収が一定以上になると停止になる可能性があり、世帯収入が減少する可能性がある。世帯の収支を考える際は、公的な制度と勤務先の制度の双方を確認して総合的に判断しよう。