8割の企業でルール明文化されず

つながらない権利とは、勤務時間外や休日にくる仕事の連絡に対応せず、プライベートな時間や休息を確保するもの。デジタル化の進展により、いつでもつながることができる便利さの一方で、にわかに注目され始めているようだ。

つながらない権利は、現在の日本では法律として明文化されてはいない。一方で世界に目を向けると、フランスが労働法改正により2017年から「オフラインになる権利」を施行。勤務時間外に業務に関する連絡に対応しない権利を従業員に与えるものとされている。

ひるがえって日本はどのような現状にあるのか。最新の厚生労働省による調査「令和6年労働時間制度等に関する実態調査」では、勤務時間外の連絡に関するルールの有無と状況を企業に質問、結果を開示している。なお、この調査でいう勤務時間外の業務連絡ルールとは、勤務時間外に、出勤していない従業員に対して行う業務連絡のことだ(災害発生等の緊急連絡を除く)。

結果は、「ルールはないが、勤務時間外に連絡することがある」企業が44.4%と最も高い。次いで「ルールはなく、勤務時間外には連絡しない」が34.0%。これらを合わせると、78.4%の企業で勤務時間外の連絡について明確なルールが存在しないことが分かる。

出所:厚生労働省「令和6年労働時間制度等に関する実態調査」

一方で、勤務時間外の業務連絡についてのルールを「就業規則で定めている」企業は全体の8.2%にとどまった。「労使協定で定めている」企業は0.3%、「労働協約で定めている」企業は0.5%と極めて少数だ。また「明文化はされていないが、ルールが存在する」と回答した企業は9.8%となっており、合計すると何らかの形でルールを設けている企業は全体の約2割に相当する。

とはいえ、「ルールはなく、勤務時間外に連絡することがある」企業が44.4%と半数近くを占めており、働き方改革が進む中でも勤務時間外の連絡が日常的に行われている実態が見えてくる。

●前編「企業160社のワーク・ライフ・バランス調査結果が明らかに 長時間労働削減への対策状況は?」