企業規模別でも差がある「勤務時間外の連絡」
企業規模別に見ると、興味深いいくつかの傾向が浮かび上がる。例えば、「ルールはないが、連絡することがある」割合は100~299人規模の企業が53.6%と最多で、他の規模の事業所と比較しても顕著に高い。調査対象においては中規模にあたる企業群であり、業務の性質上、勤務時間外の連絡が必要とされる場面が多い、あるいは明文化されたルールがない中で柔軟な対応が求められる状況があるのかもしれない。
また、「ルールはなく、勤務時間外には連絡しない」割合は企業規模が小さい方が高い傾向にある。特に1~9人規模では34.9%と最も高い。
また、調査からは労働組合の有無によっても傾向が変わることが読み取れた。就業規則でルールを定めている割合が最も高いのは、過半数労働組合のみがある企業で18.6%。労働組合がない企業の7.2%と比較して2倍以上となっている。
とはいえ、「ルールはないが、勤務時間外に連絡することがある」が最も高いのは、過半数組合と過半数組合ではない労働組合がある企業で70.2%。一方で、労働組合がない企業は44.9%だ。
「つながらない権利」について考える
急速なデジタル化の進展は、私たちの生活を飛躍的に便利にした。いつでもどこでもつながれる社会となった今、つながらない権利という概念がにわかに注目を集めている。
つながらない権利は、従業員のワークライフバランスを守り、労働環境の健全化を促す一方で、業務の円滑な進行や柔軟な働き方などとの両立が課題となる。一律のルールを決め込むのではなく、企業や職種ごとに適切な運用ルールを話し合う必要があるだろう。
例えば、緊急時の対応基準を明確化し、必要最低限の業務連絡を許容する。あるいは従業員と話し合い、例外的な連絡を可能にする仕組みを導入する。ITツールを活用し、業務時間外の通知の可否を判断することで負担を軽減するなどの施策が考えられそうだ。
つながらない権利について明らかなことは、多種多様な考えがあるということだ。それを知るだけでも意味があるだろう。
調査概要 調査名:令和6年労働時間制度等に関する実態調査 調査主体:厚生労働省 調査実施期間:2024年9月21日~10月21日 調査対象企業:1万161事業所、1万7789人、うち有効回収数 4921事業所(有効回答率48.4%)、5505人(同30.9%)