株式の懸念は「相続」にあり
1つ気になることは、同レポートで指摘していた「従来高齢化に伴う相続に絡む売却などで純流出が優勢となっていた株式」という点です。
これはよく聞く話ですが、株式のように値動きのある資産は、相続発生時の資産評価がややこしくなるため、相続が発生する前に被相続人が保有している株式を売却させて現金化したうえで、相続手続きを行うケースが多いようです。特に複数の相続人がいる場合、株式より現金の方が分けやすいという事情もあります。
しかし、これは株式市場にとって根強い売り圧力になります。株式をより多く保有しているのは高齢者で、その多くは遠くない将来に被相続人となるからです。
NISAや確定拠出年金など運用面の非課税措置は大事ですが、現金相続よりも株式で相続した方が有利になるような税制面のインセンティブがあれば、相続に伴う株式の売り圧力を最小限に抑えられます。ここは税制面の手当が必要でしょう。
20代、30代を中心に、現行制度におけるつみたてNISAの口座開設者が伸びてきており、2024年1月からは1800万円の生涯投資枠が設けられた「新しいNISA」がスタートします。
現役世代を中心に、株式などリスク資産の保有に対する関心を高めることが、長期的にインフレリスクをヘッジすることにつながり、ひいてはマーケットの活性化を促すのです。