定期性預金の利率上昇に期待できないワケ

大手銀行の預金利率を見ると、定期性預金は預入金額の多寡、預入期間の長短に関係なく、年0.002%が適用されています。そして、流動性預金である普通預金の利率は、年0.001%です。

定期性預金の利率は流動性預金の利率に対して2倍ではあるのですが、0.001%と0.002%とでは、実際に受け取れる利息の額はほとんど同じです。

仮に100万円を10年間、半年複利で運用した場合、定期性預金だと100万200円であるのに対し、流動性預金だと100万100円。その差は100円でしかありません。

預金者からすれば、「たったこれだけの差に対して解約の制限を受けるのは、割に合わない」というのが偽らざる思いなのでしょう。

現状、長期金利の代表である10年国債の利回りは、金融不安の高まる中で0.27%前後まで低下していますが、3月9日時点では0.5%で推移していました。2021年8月4日時点が0%だったことからすると、徐々に金利が生じつつあります。

とはいえ、預金利率が一向に上昇の兆しを見せないのは、資金調達意欲が弱いことの裏返しであると考えられます。

金利は資金調達意欲の強弱によって動きます。資金の借入需要が強ければ金利は上昇し、借入需要が弱ければ金利は低下します。

インフレ率がある程度上昇しても、預金の利率がそれを上回って高ければ、インフレリスクをヘッジできますが、現状においては企業の設備投資意欲が弱く、それによって資金の借入需要も低迷しているため、当面、預金利率の上昇には期待できません。

物価の上昇が収まらない限り、この低金利では現金はもちろん、預金でも、資産価値が目減りする一方なのです。