2022年は、日本経済がデフレからインフレに切り替わる転機の1年になったのかも知れません。即席めん、食パン、食用油、冷凍・レトルト食品、缶詰、加工肉、調味料、乳製品、飲料、菓子類などの食品類をはじめとして、タクシー料金、電気料金、ガス料金、ガソリン代など、例を挙げるとキリがありません。ついでに言えば、たとえ国内旅行だったとしても、ホテル・旅館などの宿泊料金が値上がりしています。

物価上昇を踏まえた「賃上げ」を重視する企業が大幅減

ちなみに2022年10月における消費者物価指数の上昇率を見ると、総合指数の前年同月比は3.7%の上昇、生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が3.6%の上昇、そして生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)が2.5%の上昇となりました。

これらのうち、総合指数の前年同月比の推移を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年1月以前は、1%未満の上昇率が続いていて、モノやサービスの値段がほとんど上がらない「デフレ大国日本」そのものだったわけですが、現在の消費者物価指数上昇率は、かねてから政府・日銀がターゲットにしていた2%という物価上昇率を上回ってきており、その点では「もはやデフレではない」と考えられます。

ただ問題は、本当にこの物価上昇率を維持できるのか、ということです。

東京財団政策研究所の主席研究員、早川英男氏のレポート「不確実性高まるインフレ動学」によると、コアCPIの上昇率は「年末に掛けては前年比+4%に近づく可能性が高い」ものの、「年が明けると政府の物価高対策による電気・ガス料金の抑制がCPIを1%以上押し下げるため、インフレ率の目先のピークは本年末となるだろう。もちろん、物価高対策の影響は来年9月までの一時的なものであり、期限が切れればインフレ率は再度上昇することになる(ただし、ガソリン補助金のように延長される可能性はある)。結局、2%超の物価上昇が持続するか否かの鍵を握るのは賃金の動向である」としています。

つまり、賃金が上がらない限り、デフレからの脱却は難しいということを言いたいのです。

では賃金が上がるのかどうかという点については、「その蓋然性は低いのではないか」というのが、早川氏の見方です。その理由として、物価上昇率が賃金上昇に及ぼす影響が小さいことと、賃上げを行うにあたって「物価の上昇」を重視する企業が大幅に減ってきたことを挙げています。