隆盛を誇る会社が良い会社であり続ける保証はない

さて、この時価総額のスライドは、さらに別の視点で見ることもできます。

1989年のアップルは、おもしろい会社ではあったけれど、時価総額世界一になるなんて、誰も想像していなかったと思います。

さらに言えば、アップルが今後も隆盛を守り続けることができるかどうかもわかりません。日本興業銀行がそうだったように。

1989年当時、日本興業銀行をはじめとする日本の銀行は隆盛を誇っていたわけです。いま「GAFAの時代」と言われますが、それは1989年当時に「日本の銀行が世界の銀行」と言われていたことを彷彿させます。

本当に良い会社というのは、その時々で話題を独占している会社でもなければ、その時々でみんなが圧倒的に良いと思っている会社でもないのです。

バフェットさんのポートフォリオで、この20年、30年で大きく新しく加わった会社は、実はアップルくらいです。また、バフェットさんは「ジェフ・ベゾスのアマゾンを買わなかったのは失敗だった」と告白しています。つまり、アップルやアマゾンは良い会社だと思っているわけです。

バフェットさんのレベルで見て「本当に良い会社」と言える会社は、そのくらいしかない。「本当に良い会社といる会社は少ない」というのは、バフェットさんが50年間バークシャー・ハサウェイという投資会社を経営した実感でしょう。

私も本当にそう思います。この仕事を30年やってきて、日本で良い会社であり続けた会社は本当に少なかった。「小が大になった」という会社の良い例はユニクロのファーストリテイリングです。「ずっと大きくて、さらに大きくなった」という意味ではトヨタ自動車くらいです。その時々のヒーローはたくさんいましたが、「出ては消え、出ては消え」です。

そこをどう見極めていくかは、本当に難しい。だけど、バフェットさんはそれをやり続けている。そこにどういうやり方があって、真理があるのか。それがバフェットさんを勉強するときの一番重要なポイントです。

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阿部修平 著
発行元 日経BP
定価 1650円(税込)