金利への理解はそのまま日常生活に役立つ
――では、金利がわかれば生活で役立つっていうのはどういうことですか?
そうだね。逆に、知らないとどんな目に遭うかを考えてみようか。金利に無知だったばかりに損することは少なくない。20万円のカードローンを年14%で借りたとき、月々の返済額次第ではすべて返し終えるのに3年も5年もかかり、利息だけでも20万円を超えることがある。そして返せなくなる。これは金利の基本になる複利の力を知らなかったためだ。
あるいは、10年以上前に借りた住宅ローンを返して、新しく低い金利に借り換えれば、月々の支払いが1万円以上安くなる。なのにそれを知らないまま無駄に多く支払っているなんて例も少なくない。
世界全体の動きを読むにしても、個人のお金生活を豊かにするという身近な分野でも、金利の初歩がわかり、その考え方を生活に取り入れると、もう少し世界が、そして家計全体がクリアに見通せる。
――金利がわからないと損しちゃうんですね。金利っていろいろなものに影響しているから、基礎は学んでおいた方がいいんですね。
金利が変われば世界景気は一変する
実は、金利がきっかけになって歴史がひっくり返った例は少なくない。たとえばね、日本はもう30年以上デフレから抜けられないんだけど、なぜだと思う?
――人口が減る中で高齢者が増え、働ける人が減ってきているからですか?
それだけじゃない。実はデフレのきっかけは、日銀の金利引き上げだったんだ。1989年に日銀が金利をドンドン引き上げたんで、株価は暴落、ついで地価も急速に下がった。バブルの崩壊だね。
一方アメリカでは、2008年にリーマンショックがおき、その後数年間世界経済は奈落の底に落ちた。今3万円の日経平均なんか7000円台まで下がったんだ。このときも、アメリカが金利をどんどん上げたため不動産価格が急落したのがきっかけだった。
あるいは2021年2~3月には、アメリカで物価が急に上がったことで、金利が引き上げられるだろうとの憶測が広がるとともに、NY株は連日のように暴落を繰り返した。また金の価格も急落した。
金利が日本、世界経済で果たしてきた役割は、多くの人が思っているよりはるかに強力なんだ。経済の根幹を揺さぶるほどの大きなエネルギーを持っている。だから、金利の基礎は知っておいて絶対損はない。
グラフを見れば、金利が景気ととても密接な関係を持っていることがわかるよ。これはアメリカの例だけど、米国金利が上がると世界全体の景気が悪化するのが常なんだ。ドル高が進むため新興国の通貨が売られて下がり、これらの国々の物価が急激に上がって景気を冷やすのが原因の1つだ。
それと、やはりドル高で世界のお金がドルに集まり、それ以外の国で使えるお金が減って景気が悪くなるって面もある。そして、なにより金利は景気よりも先に動くことが多いっていうことが大事なんだ。ということは金利を見ていれば、景気が先読みできる。