新たに増える「円安関連倒産」は前年同期比3.6倍
そこで注目したいのが、全体数に比べて数は多くないが「円安関連倒産」が増えているという点だ。東京商工リサーチによると、22年1-11月の円安関連倒産は累計18件(前年同期5件)で3.6倍と大幅に増えたとしている。10月には約32年ぶりとなる1ドル=150円台まで下落、12月27日時点では1ドル=132円台まで回復しているが、「日米金利差や中国経済の先行き懸念もあり、先の見透しは流動的な状態が続くだろう。国内では物価高が収まらず、価格転嫁が難しい中小企業の資金繰りや個人消費の動向などの不安要因も払拭されず、当面の推移には注意が必要だ」と分析する。
では実際にどのような企業が円安関連倒産をしているのか。帝国データバンクが公表した「特別企画: 「円安倒産」動向調査(2022 年 10 月)」に掲載されている円安倒産した企業の一例を見ると厳しい実態が浮き彫りになった。
マグロ全般を専門に取り扱う水産卸業者の丸隆水産(有)(神奈川県)は、10月14日に横浜地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は1968年創業で、自社工場でマグロを加工し、水産業者や地場スーパーに販売していた。だが、同社を牽引していた前代表が2021年末に死去。新型コロナ影響やロシアによるウクライナ侵攻による原材料高に急激な円安が拍車を掛け、仕入れ価格が上昇し、事業継続を断念した。申請時の負債は約5400万円だった。
鹿児島県内でうどん店などを経営する(有)豆乃屋フーズ(鹿児島県)は、9月30日に事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。同社は1989年に創業して、一定の顧客基盤を構築し、2017年6月期には年売上高約1億3300万円を計上。だが、コロナ禍では休業や時短営業を余儀なくされ、業績不振に。なんとか事業を継続していたが、ロシアによるウクライナ侵攻や円安による原料相場の高騰もあり資金繰りが悪化、先行きの見通しが立たなくなった。負債は約1億4000万円だった。
このように食品関連や繊維関連などが多く、原材料を輸入し国内で販売する、いわゆる内需型企業の円安関連倒産が目立つ。