社長の長男による経営改革でパートと対立

弁当店で働き始めたのは5年前。仕事を通して知り合った不動産会社の社長に気に入られ、「うちが経営している店を手伝ってくれないか」とスカウトされたのがきっかけでした。飲食店で副店長の経験があり、売り上げや商品、シフトの管理から、ウェブサイトや販促用のチラシのデザインなどがひと通りこなせる私は重宝され、当初は社長から「私の参謀役になってほしい」と言われていました。

しかし、3年ほど前に社長の長男が副社長として弁当店の経営に関わるようになってから、風向きが変わりました。

30歳になったばかりの副社長は大学卒業後に地元の金融機関に勤務していたこともあり、コスト管理に厳しく、DX(デジタルトランスフォーメーション)のような新しい時流に敏感です。着任早々やり玉に挙げられたのが廃棄弁当で、POSデータの推移の把握など私の負担がめっきり増えました。また、それまでは閉店後に売れ残った弁当を当日出勤のパートさんが持ち帰っていたのですが、副社長の指示でそれも有料になりました。

副社長はパートさんの時間管理にもうるさく、食事休憩から戻るのが数分遅れただけでも文句を並べ立てます。当然ながら、パートさんとの関係は悪化。私は両者の間を取り持つ難しい役割を担うことになり、この3年間で精神的にかなり疲弊しました。

「副社長vs.パートさん」の対立がピークに達したのが、年初に起こったある事件です。副社長が既存のパートさんより高い時給で新規パートさんの募集を行い、それがパートさんたちに露見したのです。後で聞いた話では、社長は難色を示したそうですが、副社長が「店のシフトが回らなくてもいいんですか」とブチ切れ、強行したということでした。