預金1000万円は当然もらう。さらに1000万円支払え
妹から相続内容を聞いた妹の夫は、すぐさま「それはおかしい」と反論したようです。そして、法的には自分たちが“生命保険1000万円に加え預金の1000万円も全額、さらにそれとは別に、佐々木さんから1000万円をもらう権利がある”と主張してきたのです。
驚いた佐々木さんはどういうことなのか説明を求めます。しかし、妹は「書面で回答する」と伝え、電話を切りました。何が何だかさっぱり分からない佐々木さんはひどく困惑してしまいました。
妹の夫は弁護士です。専門家が後ろにいる時点で、佐々木さんはこの後に起こることを覚悟していたといいます。佐々木さんは届いた書面を確認し、全身の血の気が引きました。内容は以下の通りでした。
・そもそも生命保険金1000万円は「受取人固有の財産」であるため、最初から妹のものであり、遺産分割の対象からは除外される。
・自宅も売却すればお金に変わる以上、当然に相続財産である。
・遺言書が残されていないため、法定相続分である2分の1ずつを兄妹で相続することになる。つまり、自宅3000万円+預金1000万円=4000万円の2分の1である2000万円を受け取らなければならない。
・兄(佐々木さん)が自宅を相続するなら、預金1000万円は妹が相続する。その上で、兄は別途1000万円を妹に渡す必要がある。
たしかに父親は遺言書を残していませんでした。しかし、生命保険金がそもそも受取人である妹の財産であることは、父親も佐々木さんも、そして妹さえも知らなかったのです。妹の夫により法的な根拠を示された佐々木さんは、それでも話し合いで何とか解決しようとしました。
自宅は現在生活している家であり、老後のことも考えると住み続けるほかに選択肢はないこと。当初は預金1000万円を佐々木さんが、生命保険1000万円を妹が受け取る話だったが、もちろん預金は放棄して妹に渡すので合計2000万円でどうか納得してもらいたいこと――。
佐々木さんは丁寧に、何度も頭を下げてお願いをしました。しかし、返ってくるのは「法律上の権利なので」というぶっきらぼうな返事のみ。取り付く島もなかったのです。