企業経営に必要な「6つの資本」とは?

しかし、企業の側からすると、お金だけあっても事業は成り立ちません。よくヒト、モノ、カネと言われますが、企業経営に必要な「資本」はIIRC*によれば6つあるといわれています。それは、財務資本、製造資本、人的資本、知的資本、社会・関係資本、自然資本、です。企業はこれらの限られた経営資本を上手く配分して業績をあげ、それぞれの資本の提供者へ価値を提供していかなくてはなりません。

図表 6つの資本
*IIRC :International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の6つの資本の定義を参照。IIRCは、財務資本の提供者が利用可能な情報の改善、効率的に伝達するアプローチ確立等を目指して、2010年にA4S(The Prince’s Accounting for Sustainability Project)とGRI(Global Reporting Initiative)によって設立された、規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家及びNGOにより構成される国際的な連合組織です。(出所:日本取引所グループ、https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esgknowledgehub/disclosure-framework/04.html#:~:text=IIRC%E3%81%A8%E3%81%AFInternational%20Integrated,The%20Prince's%20Accounting%20for%20Sustainability

もうお気づきかもしれないのですが、投資家側と会社側の立場の違いによって、ともするとエンゲージメント(対話)において意見の食い違いが生じてしまいます。例えば人的資本。企業にとって、従業員はなくてはならない経営資本の一つで、従業員のやる気や企業への良い感情がなければ、日々の事業はもとより将来に向けた研究や開発によって差別化する商品、サービスを提供することは難しくなります。

事業会社から見た人的資本について、さまざまな情報通信技術に関する製品やサービスを提供する富士通では自社の事業に当てはめて、6つの資本を以下のような形で表現しています。

「6つの資本」の活用と増強 (富士通グループの例)https://pr.fujitsu.com/jp/ir/integratedrep/2015/feature/resources/

長らく機関投資家は、人的資本よりも財務資本に対するリターンを重視し、極端に言えばブラック企業かどうかは気にせず、人件費を抑えてでも利益を大きくしてそれを株主に還元してくれれば、良い投資先としてきました。こうした短期主義の思考が、企業の持続可能性を削ぎ、社会での格差を生み出すという側面があることが近年クロースアップされたこともあり、機関投資家も、財務資本だけでなく人的資本や自然資本(いわゆる環境資源)に対しても、企業の取り組み方に注目をするようになってきたのです。