前回は投資家による企業とのエンゲージメントについてお話しました。今回は、エンゲージメントを受ける側である事業会社の立場から、お話をしたいと思います。

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機関投資家と事業会社でのエンゲージメント

私は長らく機関投資家として活動してきましたが、その場合、投資先企業へのエンゲージメントの最大の目的は株主価値を上げることです。すなわち提供した資本(投資したお金)に対して、どれぐらいのリターンが上げられるのか。これには、利益の分配としての配当と株価の上昇の2つ側面があり、それらを総合したリターン全体を株主総利回り(TSR:Total Shareholder Return)と呼びます。この場合のエンゲージメントは、自己満足のためではありません。最終的にそのお金を提供した人(投資信託であれば一般の投資家の皆さん)のために、経済的リターンを提供することが、機関投資家の使命であり責任だからです。

汗水たらして稼いだお金を投資しても、投資した額より少なくなったり、当初説明されていた期待するリターンの水準を下回ったりしたら、残念な気分になりますよね。そうならないために運用者は最大限の努力をしますが、その一つの行為が、エンゲージメントです。