第2回で、エンゲージメントは資産運用の様々な局面で活用されるというお話をしましたが、今回は特に運用成績を上げるための「対話」についてお話をします。「対話」と言っても単なるおしゃべりや雑談ではありません。投資手法の一つとして確立されているもので、一般には「エンゲージメント戦略」や「アクティビスト戦略」とも呼ばれます。

アクティビストと聞くと、「モノ言う株主」といった表現もされることがあり、なんだか強面な投資家で、株式をたくさん買い集めて経営陣にプレッシャーをかけ、自分たちの利益のために配当などを迫るというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。そういうアクティビストファンドもゼロではありませんが、現在日本で活動するファンドの多くは、フレンドリーアクティビストといって、経営陣との対話(エンゲージメント)をもとに企業価値の向上を伴う株式価値の向上を目指しています。

実は私もアクティビスト

そうなんです! 何を隠そう、実は私も今年6月までの2年間、アクティビストファンドの経営陣の一人でした。長らくグローバルな運用会社で経験を積み、投資先企業との対話をリードしていた私は、スチュワードシップ活動としてのエンゲージメントには数年以上の時間とよりマクロ的なテーマ(例えば気候変動対応やダイバーシティ、人権など)を取り扱うことが適していて、短期間では株主価値として表面化しにくいことを体感していました。そこで、むしろ運用成績を上げるためのエンゲージメントとはどういうものかに興味を持ち、前例があまりない国内の個人投資家の資金をベースにしたアクティビストファンドの立ち上げに参画することにしたのです。