今後、FX取引で日米金利差を取りにいく個人が増える可能性

とはいえ、現状においてFXの取引を積極的に行っている個人は、全体から見ると少数のようです。同レポートでも指摘していますが、FXの口座数は今年3月末時点で1000万口座を超えたそうですが、金融先物取引業協会の資料によると、このうちアクティブに稼働している口座数は80万口座程度とのことです。つまり口座は持っているものの、実際に証拠金を入れて取引をしている人は、まだごく一部に過ぎないと考えられます。

でも、これから先、個人のFX取引はさらに増えるかも知れません。なぜなら米国をはじめとして世界各国が利上げに転じているからです。

リーマンショック以降、日本だけでなく米国や欧州各国でも金利が大幅に低下し、ゼロ金利、あるいはマイナス金利の状態に陥りました。そのうえ2020年以降、世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、ロックダウンをした国々では経済活動の停止にともない、更なる金融緩和を行ったわけですが、ここに来て、その揺り返しとウクライナ情勢の混迷により、世界的にインフレ懸念が浮上しています。その結果、米国や欧州各国は金融緩和を止め、本格的な金融引き締めに取り組み始めました。現状、それでも金融緩和政策を維持しているのは、少なくとも先進国のなかでは日本くらいのものでしょう。

金融緩和を続ける日本に対して、米国は政策金利を立て続けに引き上げてきており、その引き上げ幅も0.75%を3回連続で実施するなど、徹底的にインフレの芽をつぶす方向に動いています。結果、日本と米国の金利差はどんどん広がりつつあります。これにより、米ドル買いのポジションを持って積極的に米ドルの値上がり益を狙いにいく個人に加え、日米金利差を取りにいく個人が、これから増えてくる可能性があるのです。

現状、大手銀行が扱っている外貨定期預金の利率を見ると、全く魅力を感じない数字が並んでいます。大手銀行の外貨定期預金で、預入金額が10万米ドル相当以上でも、1年物の利率は0.01%に過ぎません。実はユーロ建て、英ポンド建て、スイスフラン建てなど、その他の通貨に関しても一律0.01%の利率が適用されています。これが円建て定期預金になると、預入金額、預入期間を問わず一律で0.002%ですから、それに比べれば外貨定期預金の方が有利と言えないこともありませんが、何しろ年0.01%という超低金利ですから、為替手数料を加味した実質的な利率は、ほぼゼロになってしまいます。