非課税枠が引き上げられても、利用者は積立額を増やせない事情

ちなみに、月々の積立金額を6万7000円にすると、仮に運用利回りが0%だとしても、25年の積立期間で2010万円になります。つまり、毎月の積立金額さえ大きくできれば、運用のリスクを取る必要がいっさいなくなるのです。

また、さらに積立金額を大きくすることが出来れば、目標達成金額を2000万円とした場合、より早い期間で目標金額を達成できることになります。たとえば月々7万円を積み立てられれば23年10カ月で、月々10万円を積み立てられれば16年8カ月で2000万円をクリアできます。

でも、「月々10万円も積み立てるのは不可能ではないか」という声も聞こえてきそうです。楽天証券のトウシル編集部が2020年6月に発表した「つみたてNISA実態調査」によると、毎月の積立設定金額は3万円超が47%いたものの、1万円以下が27%、1万円超2万円以下が14%、2万円超3万円以下が12%でした。平均は2万4142円です。

将来、もしつみたてNISAの年間非課税枠が、現行の40万円から引き上げられたとしても、現行の積立金額から考えると、4万円、あるいは5万円というように、3万円を大きく上回る金額で積立投資できる人は、利用者の半分程度と考えられます。

つみたてNISAも、あるいはiDeCoをはじめとする確定拠出年金にしても、非課税枠が拡大されるのを歓迎する声はありますし、あるいはそれによって株式市場に資金が流入すれば、株式市場が活性化することを期待する声もあると思いますが、恐らく非課税枠を拡大したとしても、株式市場の活性化には、そう簡単ではないのかもしれません。

いくら非課税枠を拡大したとしても、それに合わせて利用者が積立金額を増やさない限り、株式市場に流入する資金量は増えないからです。現行制度において、つみたてNISAの毎月の非課税枠は3万3333円であるのに、毎月の積立設定金額で3万円超が47%であるという点からも、非課税枠を拡大することで「貯蓄から資産形成へ」の流れが容易に進むかどうかは、いささか疑問です。

非課税枠の拡大で月々の積立金額を増やしてもらうためには、結局のところ個々人の収入が増えて、資産形成に回せる余裕が生まれなければなりません。「資産所得倍増プラン」を実現させるためには、個々人の所得を増やすための経済成長も求められるのです。