公的年金に関する前著『人生100年時代の年金戦略』(日本経済新聞出版社)を出させていただいたのは2018年の初冬でした。高齢化が進む中では、何歳まで生きてもずっともらい続けられる公的年金は最大の支え役です。それにもかかわらず、あたかもすぐに破綻するような頼りにならないものと思われていることに強い懸念を感じたことが出版の契機でした。
幸い、前著は多くの方に関心を持っていただき、多くの版を重ねることができました。また19年の金融庁報告書の「老後2000万円問題」の際にはテレビの情報番組などで取り上げていただいた結果、アマゾンの全ての書籍の総合1位となることもできました(ほんの一瞬でしたが笑)。
しかしその後、19年夏には公的年金について5年に1度の「財政検証」が発表されたほか、20年には公的年金とともに、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)など私的年金についてもかなり大きな法改正が決まり、22年度以降、順次実施されていきます。制度改正は公的・私的年金だけではありません。iDeCoとともに「自分年金」づくりの有力な手段である少額投資非課税制度(NISA)もやはり5年延長が決まっています。
これまで年金など社会保障と資産運用は、あたかも別個のものとして取り上げられてきました。しかしここまでの長寿時代になると、この2つをそれぞれフルに活用し、組み合わせないと、なかなか安心な老後を過ごしづらくなっています。だからこそ国も、公的年金の改革に合わせて、私的年金やNISAなど自助努力の後押しをする仕組みをどんどん拡充させているわけです。
こうした状況の中、新著では新たな公的年金の財政検証や法改正の内容を詳細に解説するとともに、公的・私的年金とNISAを総合的に活用して老後の安心を高める実践的な方法を新たに書かせていただきました。つまりこの新しい本は、公的年金の使い方と、iDeCoやNISAなど自分年金づくりの両方を解説し「全部入り」的な内容を目指したものです。