公的年金に関して僕はいつも3つのポイントをお話ししています。①年金額はあらかじめ決まっているのではなく自分で「育てる」もの。自分や家族の働き方やもらい方で大きく変わる②年金は運用商品ではなく「人生の大きなリスクに備えるお得な総合保険」である③少子高齢化は何十年も前から分かっていたこと。対策は年金財政の中にかなり織り込まれていて破綻などしない――という内容です。

そうした前提の下、新著では「フルに使い倒す」ためのさまざまなノウハウをたくさん詰め込んでいます。例えば改正の目玉の1つである、年金の繰り下げ増額の選択肢の70歳から75歳への延長。これについては①75歳までの延長は全員ではない②1月遅らせるごとに0.7%という増額率は全体では財政中立になるように決まっているが、実は受給開始年齢によって有利・不利がある③「厚生年金とセットである加給年金が欲しければ厚生年金は原則通りもらい、基礎年金のみ繰り下げ」というセオリーは必ずしも正しくない④繰り下げで名目額が増えた場合、税・社会保険料を引いた手取りは元の年金額によりそれぞれどれくらい増えるのか⑤夫の遺族年金まで考えた場合、妻の厚生年金の増額は本当にお得か――などです。

このほか改正については、短時間労働者が厚生年金に加入できる対象企業が広がる適用拡大のメリット(すでに自分で年金・健康保険料を払っている第1号被保険者か、保険料を払っていない専業主婦など第3号被保険者かで全然異なります)、シニア男性が60歳以降も厚生年金加入で働き続ける場合の年金の増え方、働きながら厚生年金を受給すると一部が減額される在職老齢年金制度の基準緩和の意味合いも詳細に書きました。

また直接改正には絡みませんが、障害年金、遺族年金、年金離婚分割など、公的年金を「使い倒す」知識も改めて詳細に解説しています。

年金財政については、19年財政検証のデータを基に、実は少子高齢化への対応はかなり織り込まれていて(引き続き財政制度の改善は必要ですが)破綻などしないことも検証しています。年金財政について、普通の人の言葉で分かりやすく書かれたものはあまりないと思いますので、読んでいただけると「年金不信」へのイメージは大きく変わると思っています。