「物価は上がっているのに年金は減らされている……」「今後も年金は毎年のように減っていくに違いない!」と言う人がいます。年金額はずっと同じではなく、毎年改定されるのは事実です。年度によっては引き下げになることもあります。ただ、それにはルールがあること知っておく必要もあります。

なぜ物価高でも年金がマイナス改定されるのか?

2022年度の年金額は前年度と比べ、0.4%下がりました。昨今の物価高・値上げラッシュのなかで大幅なマイナス改定がされることになり、今後年金で生活できるか不安になる人も多いことでしょう。2022年度の引き下げを報じる、一部のメディアの見出しには「高齢者が悲鳴」「物価高と年金引き下げで二重苦」といった文言もあり、ますます不安を募らせた人もいるかもしれません。

前回「年金は破綻する」と嘆く人は知らない―年金を“持続可能”にする驚きのカラクリ取り上げたとおり、賃金と物価の変動率を元に年金は毎年度改定されています。しかし、だからといって毎年マイナスになり続ける……と悲観するのはいささか早計です。必ずしも、マイナスが続くわけではないのです。

具体的には「名目手取り賃金変動率」や「物価変動率」を用いて改定を行うことになりますが、これはその年ではなく、過去の年の数字が用いられます。物価変動率は前年の値を指し、「実質賃金変動率+物価変動率+可処分所得割合変化率」の合計で算出される名目手取り賃金変動率については、実質賃金変動率は2~4年度前の平均値、物価変動率は前年の値となります。つまり今現在の物価高で今年度の年金額が決まるわけではありません。