実は仲が悪い? 三井住友銀行との確執のうわさ

トヨタ自動車は時々「三井住友銀行と仲が悪い」といわれることがあります。なぜそのようなうわさがあるのでしょうか。理由は、トヨタ自動車が戦後に迎えた経営危機にあります。

1949年、GHQの統治下で日本にドッジラインが実施されました。金融と財政の緊縮政策であり、インフレを収める効果はあったものの、製造業を中心に不況を招きます。トヨタ自動車も不況のあおりを受け、2億円もの資金不足が見込まれる事態に陥りました。

トヨタ自動車は存続のため、織機時代から取引があった大阪銀行(現在の三井住友銀行)に助けを求めますが、融資はかないませんでした。その際、「機屋に貸せても、鍛冶屋には貸せない」と言われたと伝わっています。結局、日銀のあっせんで協調融資が実行され、トヨタ自動車は窮地を脱しました。このエピソードから、トヨタ自動車と三井住友銀行は不仲であるという説があります。

しかし現在、両者に確執があるようには見えません。トヨタ自動車は社外取締役に三井住友銀行出身者を持ち、三井住友銀行も他行と協調し新型コロナウイルス対策としてトヨタ自動車に計1兆円の融資枠を設定しました。

内情を詳しく知ることはできませんが、トヨタ自動車と三井住友銀行は少なくとも表面的には良い関係を築けているのではないでしょうか。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。