ソフトバンクが「親子上場」する理由

ソフトバンクグループは2018年12月、通信事業を手掛ける子会社「ソフトバンク」を上場させました。それまでソフトバンクグループはソフトバンク株式の99.9%を保有していましたが、上場に際し保有割合が63.1%になるまで売り出しました。その後追加の売り出しを実施しますが、いまだソフトバンクグループはソフトバンク株式の40.68%を握る筆頭株主です。このように、親会社と子会社が同時に上場しているケースを「親子上場」といいます。

上場当時、ソフトバンクの業績はおおむね好調でした。同社の2019年3月期における売上高は3兆7463.05億円、純利益は4307.77億円を計上しています。

出所:ソフトバンク 2019年3月期決算短信

毎年安定的な収益を稼ぐソフトバンクを売り出す必要はなさそうですが、なぜソフトバンクグループは親子上場を選んだのでしょうか。

理由の1つは資金調達にあると考えられています。ソフトバンクグループは、ソフトバンクの売り出しで約2.6兆円の資金を手にしました。このように、親会社は子会社を新規上場させることで資金調達できるメリットがあります。

一方で、親子上場は、親会社の支配が残ったまま子会社を上場させる方法であり、子会社の少数株主の利益が阻害されるという指摘がなされてきました。ソフトバンクのケースも、ソフトバンクグループが4割以上の株式を保有することから、他の株主の意見が反映されやすいとは言い難い状況です。

日本は他国と比較し親子上場の例が多く、政府は親子上場の解消を促しています。今後は親子上場解消の波が到来するかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。