「年金はあてにならない」と嘆く前に、2004年の年金制度改正を理解しよう

日本は長寿国で、2021年の平均寿命(0歳時の平均余命)は、男性が81.47 年、女性が87.57 年(厚生労働省「令和3年簡易生命表」より)となっています。少子高齢化が進むと保険料を払う現役世代が減り、年金を受給する世代が増えます。このこともあってか、公的年金について若い世代の間では「あてにならない」「制度は破綻する」と半ば諦めムードが漂うことがあります。

しかし、公的年金制度は破綻しないように設計されています。その根拠は、2004年の年金制度改正にあります。

年金制度改正は、100年間の年金財政の安定化を図るために、①現役世代の保険料の水準に上限を設けて固定し、②その中で、高齢世代への給付水準を調整(場合によっては、給付減になることも)するという、2点を両立させた大きな転換点でした。

②の “給付水準が調整される”とは、どのようになされるかというと公的年金の被保険者数の減少と平均余命の伸びを勘案した「マクロ経済スライド」によって調整されます。そもそも、年金の給付額は毎年、同じ額でずっと続くわけではなく、物価変動率や名目手取り賃金変動率といった経済の変動を基準に毎年度改定されることになっています。ただ、それらの変動をダイレクトに給付額に反映するのではなく、マクロ経済スライドによって抑制される仕組みになっています。

※マクロ経済スライドによる調整期間は、「財政の均衡を保つ見通しがたつまでの期間」とされており、今もその“期間”のさなかにあります。期限は今のところ明確に決まっていません。

2020年度の年金給付額の改定を例にとって説明します。2020の年度の改定で用いる物価変動率は+0.5%、名目手取り賃金変動率は+0.3%となっていました。この場合、名目手取り賃金変動率+0.3%を基に年金額が改定されるところ、この年度のマクロ経済スライドによる調整率が-0.1%でした。そのため、+0.3%から-0.1%分が調整され、結果的に年金の受給額は前年度から+0.2%の改定になりました。つまり、実際の賃金の伸び率と比べ、0.1%“少なく”改定されたのです。