〈前編のあらすじ〉

関東のとある地方都市に住む奥村恵美子さん(仮名)は57歳の専業主婦。夫の亮介さん(59歳、仮名)は、一部上場のメーカーに勤務する営業職の転勤族。亮介さんは現赴任地を最後に定年となり、その後は東京にマンションを購入して夫婦で老後生活を送る予定でした。

しかし、亮介さんが恵美子さんに黙って、ワンルームマンション投資を始めていたことが発覚しました。しかも、預貯金の一部を使い、かつ定年後も続くローンも組んでしまったと言います。

家族としては、その投資用マンションを売却し、手放してほしいと考えていますが、それは可能なのでしょうか? 後編では、家計や奥村家の資産、マンションの収支から検証していきます。

●前編はこちら

奥村家の家計とワンルームマンション投資の収支

亮介さんが間もなく定年を迎える、奥村家の家計状況は、以下のとおりです。

亮介さんの手取り年収:約1000万円
1カ月の生活費(夫婦2人分):約35万円
預貯金:3000万円(投資用ワンルームマンションへの頭金や諸経費を払った後の金額)
​※亮介さんの定年退職時に2000万円程度の退職金を受け取る見込み

子育てが終わった夫婦2人の生活に経済的な問題はなかったことが分かります。家計収支の黒字分は預貯金に蓄えられ、このまま定年まで増加していく見込みです。亮介さんはゴルフなどの趣味にそれなりにお金を使いますが、特に問題になることはありませんでした。今後は、定年後に“終の棲家”として3000万円程度のマンションを現金で買う予定で、資金を準備していたとのことです。

ワンルームマンション投資の収支等

亮介さんが買ったワンルームマンションの収支は、以下のようになっています。

ワンルームマンションの物件価格:3000万円(築25年、建物部分2100万円)
ローンの返済期間:20年
管理費・修繕積立金:3万円/月
頭金:1000万円
ローン返済額:10万3000円/月
月額家賃:13万5000円

不動産投資では社会問題となった事件もあり、誰でも融資を受けられるわけではありません。しかし、亮介さんのような高収入の会社員であれば貸し出す銀行はあるので、販売会社も強く勧めたのだと推測されます。

亮介さんのワンルームマンションは購入から相談時まで約1年間、ずっと入居者がいて家賃収入を得られています。しかし、ローンの返済に管理費・修繕積立金を加えると収支はトントン、固定資産税・都市計画税、火災保険などの分は赤字となります。赤字となる金額は、年間およそ10万円程度です。