「ワンルームマンションを手放してほしい」という家族の想いは叶うか
ここまで説明したところで、
「やはり、それほど割のいい投資ではないと思えます。なんとか売却できないでしょうか」
と、お2人は口を揃えて言いました。
不動産投資に失敗して物件を売却するケースはよくありますが、必ずしも希望価格で売れるとは限りません。ローンの残債を上回る金額で売却できなければ、ローンが残ります。その場合、残りを一括返済できなければ、売却そのものができなくなってしまうのです。
ただ、恵美子さんによれば、マンションの買い取りを希望するダイレクトメールは頻繁に届くとのこと。もしかすると希望価格で売却できるかもしれません。
そこで、いくらで売却できるかを都内の信頼できる不動産会社に査定してもらうことにしました。
後日、由佳さんから不動産会社の担当者との面談の報告をいただきました。その席で、次のように言われたそうです。
・亮介さんのマンションは都内の人気エリアにあり、空室になりにくいと考えられる
・購入金額より高く売るのは無理でも、残債を上回る金額での売却なら可能ではないか
最終的に「売却希望であれば、仲介します」と提案され、ご家族はホッとして仲介を依頼したとのこと。
「これでマンションが売れれば、一安心です。両親には早く定年後に住むマンションを見つけてほしいです」と由佳さん。
ご家族には亮介さんに対していろいろ言いたいこともあるでしょう。しかし、FPとしては「不動産投資で無理をして自己破産」のような痛ましい話ではなく、胸をなで下ろしました(立地がよかったのが幸いしたのでしょう)。
このような事例が多いのは、不動産には金融商品の投資とは違う魅力があるからではないかと思います。「大家さん」になることには、一種のロマンがあるのかもしれません。さらに、「節税」「年金代わり」というキラーフレーズが背中を押すのでしょう。
とはいえ、最低でも数百万円の投資となります。一時の感情で取り組むのは避けてほしいところです。