ワンルームマンション投資の謳い文句「節税効果」はなぜ得られるのか

亮介さんはその点について、販売会社の担当者から「赤字分で節税できる」と説明を受けていたそうです。不動産投資で家賃収入から経費を差し引いた金額は、不動産所得として扱われます。不動産所得はマイナスになるケースもあり、その場合は給与所得などから差し引くことが認められています(税の計算では、損益通算といいます)。

固定資産税等“かかったお金”を経費として差し引けるのは当たり前ですが、さらに不動産の場合には減価償却という仕組みがあります。建物の購入費は一度に経費として計算するのでなく、耐用年数に応じた減価分を毎年経費として差し引けるのです。価償却費は建物価格に耐用年数ごとの償却率を掛けて求めます。亮介さんのワンルームマンションの耐用年数は32年(償却率0.032)で、毎年の減価償却費は67万2000円です(2100万円×0.032)。つまり、実際には支出のない減価償却費の約67万円を所得から差し引けるというわけです。

こうしたことから「節税」は、確かに不動産投資のメリットの1つではあり、不動産投資を勧める際の常套句になっています。亮介さんも「年金代わり」に加え、こうした謳い文句で心動かされてしまったのでしょう。

ただし、定年後の年金生活では「節税メリット」はあまり意味がないものに…

亮介さんの現状のワンルームマンション投資の収支は、特段問題があるとはいえません。確かに、ローンの完済後は家賃収入を年金代わりに使えるようになるでしょう。

ただ、定年後は不動産投資の多少の赤字には耐えられても、長期の空室で家賃ゼロが続いた場合はただ赤字が累積する一方になります。また、減価償却での節税が有利なのは高収入な現役のうちだけで、年金生活者になれば、あまりメリットはありません。